3 感染症法における動物由来感染症対策 |
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厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室長 桑崎 俊昭 |
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1. |
はじめに |
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「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)」は平成10年10月2日に公布され、平成11年4月1日から施行されている。 |
感染症対策については、それまで、伝染病予防法に基づき各般の施策を講じてきたが、明治30年の同法制定以来100年が経過し、この間、医学・医療の進歩、衛生水準の向上、人権の尊重、国際交流の活発化等感染症を取り巻く状況が大きく変化する一方、腸管出血性大腸菌O-157感染症やエボラ出血熱等の新興感染症が出現し、また、近い将来克服されると考えられてきた結核やマラリア等の再興感染症が脅威となってきたこと等を踏まえ、抜本的見直しを行ったものである。 |
なお、動物由来感染症対策は、感染症法に基づくものの他、狂犬病予防法及び検疫法に基づく対策も実施されている。本稿では、感染症法に基づく対策を中心に記載し、併せて狂犬病予防法に基づく対策についても触れることとしたい。
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2. |
感染症法の概要 |
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感染症法の概要は、以下のとおりである。 |
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(1) |
感染症の発生・拡大に備えた事前対応型行政の構築 |
(2) |
感染症の類型化と医療体制の再整理 |
(3) |
患者の人権尊重に配慮した入院手続きの整備 |
(4) |
感染症のまん延防止に資する必要十分な消毒等の措置の整備 |
(5) |
検疫体制・動物由来感染症対策の整備 |
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3. |
感染症法に基づく動物由来感染症対策の具体的内容 |
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(1) |
獣医師の届出 |
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エボラ出血熱又はマールブルグ病にかかった(疑いのある)サルを診断した獣医師は、直ちに、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出ること |
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(参考1) |
届出事項:動物の所有者の氏名・住所、動物の種類、感染症の名称、動物の所在地 |
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(2) |
感染症の病原体を媒介するおそれのある動物の輸入に関する措置 |
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ア. |
輸入禁止 |
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エボラ出血熱、マールブルグ病を対象感染症とし、これらの主要な感染源である動物のうちサルについて、厚生労働省令・農林水産省令で定める地域から発送等されたものは輸入禁止 |
(参考2) |
現在、サルの輸入が認められている地域:米国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、中国、ガイアナ、スリナム |
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イ. |
輸入検疫 |
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1. |
サルを輸入しようとする者は、エボラ出血熱及びマールグルグ病にかかっていない旨等が記載された輸出国政府機関により発行された証明書の添付が必要 |
2. |
動物検疫所において、エボラ出血熱及びマールブルグ病にかかっていないかどうか検査を実施 |
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ウ. |
検査に基づく措置 |
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1. |
動物検疫所においてエボラ出血熱又はマールブルグ病にかかっているサルを発見した場合には、最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に通知 |
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4. |
感染症法の5年ごとの見直しに向けて |
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感染症法では、5年ごとに見直しを行うことが明記されており、これを受けて平成16年度には改正された感染症法が施行されることとなる。今後、動物由来感染症対策の見直しを行う場合には、平成14年中に具体的な改正案をとりまとめる必要がある。 |
結核感染症課としては、本研究会等より幅広く必要な科学的情報を収集し、改正に向けた課題の整理、科学的裏付けのまとめ、対応案の策定を行っていきたいと考えている。 |
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5. |
狂犬病予防法に基づく対策の強化 |
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狂犬病予防法に基づき、通常時の対策として、犬の登録、予防注射及び捕獲抑留並びに輸出入検疫を実施しているところであるが、感染症法の制定に併せて、狂犬病予防法の一部改正を行い、検疫対象動物として、新たに、猫、あらいぐま、きつね及びスカンクを追加し、輸入時対策を強化したところである。 |
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輸入検疫頭数の推移 |
(農水省動物検疫統計、( )内は厚生科学研究による年間輸入頭数の推計値) |
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サル |
犬 |
猫 |
きつね |
アライグマ |
スカンク |
平成11年 |
4,534(貿易統計) |
12,883 |
(2,100) |
(180) |
(500) |
(200) |
平成12年 |
4,537 |
11,183 |
2,243 |
67 |
2 |
30 |
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