第10回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

P-1 日本国内におけるダニ媒介性脳炎の血清疫学調査
 
○好井健太朗1)、持舘景太1)、大森優紀1)、千葉裕美子1)、真田崇弘1)、瀬戸隆弘1)、前田純子1)
小原真弓2)、安藤秀二2)3)、伊藤直人4)、杉山誠4)、佐藤浩5)、福島博6)、苅和 宏明1)、高島 郁夫1)
1)北海道大学大学院獣医学研究科公衆衛生学教室、2)富山県衛生研究所、
3)国立感染症研究所、4)岐阜大学応用生物科学部人獣共通感染症学研究室、
5)長崎大学、6)島根県保健環境科学研究所
 
 
【背景と目的】
  ダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)はヒトに重篤な脳炎を引き起こす、人獣共通感染症の原因ウイルスである。日本では1993 年に北海道において初めてダニ媒介性脳炎(TBE)の患者が発生し、同地域における疫学調査によりTBEV の流行巣が存在することが明らかとなった。これまでの所、北海道以外ではTBEV の存在は確認されていないが、ウイルスを媒介するマダニや自然宿主となるげっ歯類は、日本国内に広く分布するため、TBEV の流行巣が存在する可能性がある。そこで本研究では、日本各地におけるTBEV の分布を調べるため、野鼠を対象とした血清疫学調査を行った。
 
【材料と方法】
 疫学調査により捕獲された野鼠検体として、青森14 検体、富山381 検体、岐阜89 検体、愛知92 検体、島根58 検体、徳島28 検体、対馬45 検体の合計707 検体、北海道内では上ノ国53 検体、せたな123 検体、北斗48 検体の合計224 検体を使用した。これら検体の血清より、ウイルス様粒子を用いたELISA 法により血清中の抗TBEV 抗体のスクリーニングを行い、中和試験による確定診断によりTBEV 感染検体を判定した。
 
【結果と考察】
  島根県の野鼠検体より抗TBEV 抗体陽性個体が検出され、北海道以外で初めてTBEV の流行巣の存在が示唆された。また北海道においては、上ノ国、せたな、北斗の3 地域において抗体陽性の野鼠が確認され、TBEV の流行巣が長期間維持されていることが示された。島根県と北海道以外の地域からは抗TBEV 抗体陽性の個体は確認されなかった。
今後はTBE の疫学調査範囲を拡大し、より詳細な調査を行う必要があると考えられる。また、流行その存在が示唆・確認された地域においてはウイルス分離を試み、その性状を解析することで地域住民への危険度を評価していくことが重要と考えられる。
 
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