第8回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

10 宮崎県におけるイヌのレプトスピラ症の発生状況及び分離株の性状解析
 
○小泉 信夫1)、武藤 麻紀1)、山本 正悟2)、下村 高司3)、相馬 宏敏4)、渡辺 治雄1)
1)国立感染症研究所・細菌第一部、2)宮崎県衛生環境研究所、3)宮崎県衛生管理課、4)宮崎県健康増進課
 
【緒言】
  2006年夏季の宮崎県北部を中心としたレプトスピラ症の多発事例を受けて,2007年8月から11月にかけてヒトおよびイヌのレプトスピラ症強化サーベイランスを行った.今回はイヌのサーベイランス結果を報告する.
 
【方法】
  イヌのレプトスピラ症サーベイランスのため,県内12か所の動物病院を検査定点病院に選定し,レプトスピラ症を臨床診断した場合には,レプトスピラ分離のため血液をコルトフ培地およびEMJH培地に接種,また遺伝子検出および血清診断のための検体の採取を行った.分離株についてはflaB部分塩基配列決定,レプトスピラ標準抗血清との反応性および制限酵素NotTを用いたパルスフィールド電気泳動法により解析を行った.
 
【結果】
  レプトスピラ症臨床診断20例のうち17例が,実験室診断によりレプトスピラ症と確定した.実験室診断の内訳は,分離のみ5例,血清診断のみ8例,分離および血清診断4例であった.レプトスピラ感染イヌの性比はオス:メス=13:3,年齢分布は5ヶ月〜13歳10ヶ月 (中央値:4.5歳)で,死亡率は62.5%であった.分離株の血清群はレプトスピラ標準抗血清との反応性から,Australis 7株(4頭),Canicola 1株(1頭),Hebdomadis 6株(4頭)と推定された.また分離株のレプトスピラ遺伝種はflaB部分塩基配列の相同性から,すべてL. interrogans であると推定された.
 
【考察】
    今回のサーベイランスにより,宮崎県広域でイヌのレプトスピラ感染が起こっていることが明らかとなった.ヒト患者が発生していない地域でもイヌのレプトスピラ症が発生していることから,これらの地域でもヒトのレプトスピラ感染が起こる可能性が示唆された.これまでに,宮崎県のレプトスピラ症患者血清中には血清群Australis, Hebdomadisに反応する抗体が検出されている.イヌがヒトの感染源となっているかを明らかにするために,今後は急性感染だけではなく,イヌのレプトスピラの保有状況を調査する必要がある.
 
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