第7回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


7 ペット用カメにおけるSalmonella の保有状況と分離菌の性状
 
○黒木俊郎1),石原ともえ1),宇根有美2)
1)神奈川県衛生研究所・微生物部, 2)麻布大・獣医・病理学
 
【目的】
  ペット用カメが感染源と推定あるいは断定されるSalmonella 感染症が1960〜70年代の米国において報告がみられるようになり、わが国においても1975年に広島県において2例の重篤なSalmonella 感染症が発生した。こうした事例を受けてペット用カメ、特にミシシッピアカミミガメ(通称ミドリガメ)におけるSalmonella 保有に関する調査が行われ、高率に保有していることが明らかとなった。しかし、有効な対策が取られることなく経過し、近年においても2005年に千葉県においてペット用カメが感染源とされる事例が2例発生した。そこで、ミシシッピアカミミガメを中心にペット用カメにおけるSalmonella の保有状況を把握するための調査を改めて実施し、分離菌の性状を調べた。
 
【方法】
  ミシシッピアカミミガメは秋田県、神奈川県、大阪府、長崎県および沖縄県のペット販売店より購入した幼体93個体と、野外採取個体ならびに公園の池に生息する個体や飼育放棄個体の成体31個体(一部カミツキガメおよびワニガメを含む)、併せて124個体を対象とした。カメが飼育されていた容器の水やカメを採取した公園の池の水も調査対象とした。
  カメの肝臓、腸管と内容物および糞便はBuffered peptone water (Oxoid) にて37℃、20〜22時間前培養後、培養液1ml をハーナ・テトラチオン酸塩培地(栄研器材)10ml に接種し、42℃で18〜20時間選択増菌培養し、1白金耳をSS寒天培地(栄研器材)およびESサルモネラ II 培地(栄研器材)に接種し、36℃で20〜22時間培養した。Salmonella 様集落を生化学的性状により同定し、さらにO型別ならびにH型別を実施した。血清型別不能菌は従来法、IDテストEB-20(日水製薬)あるいはAPI20E(ビオメリュー)を用いて亜種の鑑別を行った。分離株について、常法に従い薬剤感受性試験とPFGEパターンの解析を行った。
 
【結果と考察】
  成体では31個体中3個体(9.7%)からSalmonella が検出された。検出個体は野外採取個体が2個体、池に生息していた個体1個体であった。幼体では93個体中69個体(74.2%)から検出された。成体ではすべて腸管から検出され、肝臓からは検出されなかった。幼体では腸管から66個体、このうち肝臓からも検出されたのは28個体、肝臓のみから検出されたのは3個体であった。幼体を購入した19店舗のうち18店舗のカメからSalmonella が検出された。
Salmonella は幼体では亜種 I が44個体から検出され、S. Montevideo が24個体、S. Litchfield が5個体、S. Newport が4個体、S. Poona(Farmsen)が4個体、S. Typhimurium が3個体、S. Thompson が2個体、S. Sandiego が1個体、その他が1個体であった。亜種 I 以外のSalmonella は33個体から検出された。成体では野外採取個体からS. Litchfield と亜種 II が、池に生息していた個体からS. Newport が検出された。飼育水と池の水からは個体由来株とほぼ一致する血清型が検出された。
本調査において、ペット用カメのうち市販の幼体が高率にSalmonella 亜種 I を保有していることが改めて確認された。
 
 本調査は秋田県動物管理センター、長崎県西彼保健所、長崎県環境保健研究センター、長崎市保健環境試験所、沖縄県動物管理センター、沖縄県衛生環境研究所、沖縄県中央食肉衛生検査所の協力をいただきました。ここに深謝いたします。
 
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