第7回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


6 輸入愛玩用カメから分離される抗酸菌
 
○後藤義孝1),岩瀬祥子1),芳賀猛1),宇根有美2)
1)宮崎大・獣医微生物学, 2)麻布大・獣医病理学
 
【目的】
  カメ等の爬虫類から免疫力の低い老人や子供に非定型抗酸菌(Mycobacteria other than tubercule bacilli:MOTT) の一種 M. chelonae が感染した例が報告され、爬虫類がヒトに対して起病性を有するMOTT を保有している可能性について指摘されてきたが、国内における調査報告はない。そこで、輸入数が多く、リスクの高い年齢層が入手しやすいミシシッピアカミミガメ(Trachemys scripta elegans) の幼体を中心にカメのMOTT 保有調査を行った。
 
【材料と方法】
  ミシシッピアカミミガメ107匹(幼体94匹、成体13匹)、カミツキガメ5匹、ワニガメ2匹 の計114匹の皮膚、肝臓、肺、腸を材料とし、1%小川培地を用いた菌分離と分離菌の16S rRNA遺伝子およびhsp65遺伝子の解析に基づいた菌の同定解析を行った。
 
【結果】
  114匹中87匹、76.3%(ミシシッピアカミミガメ:83/107、カミツキガメ:3/5、ワニガメ:1/2)から合計230株の抗酸菌が分離された。検体別では、皮膚で127株(114匹中83匹、72.8%)、肝臓で38株(114匹中32匹、28.1%)、肺で 30株(114匹中18匹、15.8%)、腸で35株(114匹中27匹、23.8%)と皮膚からの分離率が最も高かった。遺伝子解析の結果、M. terrae(86株)、M. fortuitum (19株)、M. senegalense(2株)、M. arupense(2株)、M. intracellulare(1株)、M. chelonae(1株)、M. szulgai(1株)などが同定された。残る117株は、大部分がRunyon の分類でIIIまたはIV群に属することが分かったものの菌種は同定できなかった。
 
【まとめ】
 M. terrae は日和見感染症の原因菌であるが、健康なヒトにおいても魚のヒレによる刺し傷から手指の慢性腱滑膜炎を起こしたという報告もある。今回の調査結果はカメを取り扱う際には衛生面に留意する必要があることを示している。
 
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