第6回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


4 人と動物(犬・猫)のクリプトコッカス感染症:その病理所見について
 
○金井孝夫 1),大西直子 1),中村 孝 2),青木和美 2),梅田昌樹 3)
1)東京女子医科大学
2)セルコバ検査センター
3)ヴイペック
 
  市中の動物病院における伴侶動物の日常診療に少ないながらもクリプトコッカス(C)感染症に遭遇することがある。一方、C感染は医学領域でも日本の真菌感染症としてアスペルギルス、カンジダ症についで重要である。免疫不全のみならず呼吸器内科、小児科、皮膚科領域に浅在性・深在性問わず、広く公衆衛生学的にも重要疾患である。今回は、動物病院より検査センターへ診断依頼された生検材料を基に報告する。犬では部位からいえば猫に多い犬の鼻腔内感染例。猫では皮膚感染、右前肢肘部に腫瘤形成例である。また人C症例の剖検例1例も合わせて報告する。以上、犬と猫のc感染生検例と、人のC感染症剖検例1例について若干ではあるが比較検討を行い、文献的検討を行う予定である。
 
1.犬のクリプトコッカス感染例
  症例:犬/雑種、2歳、メス。経過:2006年3月、1か月前に鼻稜が腫脹、その後、元気・食欲の消失、ふらつき、強直性痙攣で来院。CT検査結果、右前頭洞〜鼻道内に充満物あり。頭部は大脳に血腫の跡あり。今回は経鼻的にFNAにて充満物の吸引され、スタンプ(ライトギムザ染色)にてクリプトコッカス様の構造物が確認され、スタンプ標本と組織の病理検査依頼となった。以下、それらの所見がえられた。
  病理診断:クリプトコッカス症。・病理所見:(スタンプ標本の鏡検結果)塗沫標本においても、粘膜上皮とともに上記の特徴を有する病原体が散在性あるいは小集塊状に多数認められる。(組織標本の鏡検結果)粘膜下組織に非染色性の厚い莢膜を有する類円形〜楕円形の病原体がシート状に増殖し、増殖巣内にはマクロファージ、好中球、好酸球等の炎症性細胞が軽度に浸潤している。
 
2.猫のクリプトコッカス感染例
  症例:猫/種は不明、5歳、オス。経過:2006年4月、右前肢肘部の皮膚感染と腫瘤形成にて来院。X線上骨侵襲の可能性あり。麻酔下の細型トレパンで数カ所生検施行。断脚も考慮し腫瘤の生検施行。採取直後の肉眼所見は浸潤性、中心部壊死、出血であった。
  病理診断:クリプトコッカス性化膿性肉芽腫性炎。・病理所見:Tru-cut生検によって採取された小組織は、変性性好中球を主体とした炎症性細胞によってほぼ完全に占拠されている。好中球の他に観察される細胞には活性化して腫大したマクロファージが判別できるが、好中球による組織破壊により詳細な構成細胞は明瞭には観察されない。これらの炎症性細胞の間隙に3Q-50μmほどの大型円形で透明な空隙を有し、1〜6個の弱塩基性三日月状〜コンマ状の核様構造物を内包するクリプトコッカスと思われる構造物が頻繁に観察される。
 
3.人のクリプトコッカス感染例
  症例:71歳、男性。家族歴:特記事項なし。既往歴:30歳肺炎罹患。以後喘息あり。40歳リウマチ様関節炎、69歳、右前頭部を打撲。現病歴:70歳時の6月頃、頭痛を自覚。以前からの高血圧と放置。9月下旬、食欲不振、吐き気、嘔吐が出現。某医で胃底部の異常陰影を指摘。10月、東京女子医大病院にて入院。胃生検施行するも「良性瘢痕」。食欲不振、嘔吐が増強し、同月下旬にX線検査で十二指腸下行脚内側に腫瘍状陰影を認めた。肝シンチグラムで肝腫、膵シンチグラムで膵全体にRIの取り込みが減退し膵機能低下が認められた。胸部レントゲン図では異常なし。EMIscanでも異常所見なし。その後、傾眠状態となり尿失禁、健忘、失見当識が出現、11月7日、37.8度の発熱があり、血圧が180/105と上昇し、11月8日、死亡した。以上が臨床所見の概要であるが病理所見および考察を含め当日発表予定である。
 
  以上、犬、猫また人のクリプトコッカス症を供覧し、罹患部位が異なる3種のクリプトコッカス症の感染症について若干ながら考察したい。なお、人体例の発表にあたり東京女子医大第二病理学小田秀明教授のご協力に謝意を表する。
 
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