第6回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


3 北海道のエキノコックス感染源対策の試みと今後の住民参加
 
○奥祐三郎 1),巖城 隆 2),スミヤ・ガンゾリック 3),野中成晃 1),井上貴史 1),宮原俊之 4),岡崎克則 5),神谷正男 6)
1)北海道大学獣医学研究科寄生虫学教室
2)目黒寄生虫館
3)環境動物フォーラム
4)オホーツクの村
5)倶知安町風土館
6)酪農学園大学環境システム学部環境動物学教室
 
【目的】
  北海道ではエキノコックス(多包条虫)症が蔓延し、キツネの感染率が約40%、犬の感染率も0.3-1%と報告されている。毎年10-29名の患者が発生しているが、今後の患者数増加が予想され、本州においても感染犬や感染豚が発見された事からも流行地拡大が危惧されている。
  多包条虫は野生動物の寄生虫であることから、対策は困難と考えられていたが、ドイツにおいて航空機を用いた大規模な駆虫薬入りベイト散布が行われ、野生ギツネに対する駆虫効果が報告された。我々は、北海道におけるエキノコック蔓延を抑えるために、1997年より駆虫薬入りベイト散布によるキツネを駆虫を試み、ベイトの散布(設置)法、駆虫効果の判定法、安価なベイトの作成法を試みてきた。更に、ベイト散布中止後の推移についても観察した。
 
【材料と方法】
  まず、自然環境に地域差がある地域に対応するために、小清水町(約200km2)と小樽市(約150km2)においてベイト散布を実施した。ベイト散布法としてはキツネの巣穴周辺に限定した散布、地域全体の道路沿いへの散布、さらに散布スポットを設定した散布法である。キツネの駆虫効果判定ためには、有害鳥獣駆除の対象となったキツネの剖検と、野外でキツネ由来と考えられる糞便を多数採取し、これらの糞便検査(虫卵検査と糞便内抗原検査)によるエキノコックス症流行状況評価を行った。なお、キツネの剖検例についてはベイト(テトラサイクリン含有)の摂取率の評価も同時に実施した。
 
【結果と考察】
  ドイツと北海道では、キツネ(終宿主)や野ネズミ(中間宿主)の個体数、植生が異なり、我々は北海道においてより効率的にキツネがベイトを摂取出来るように、上述した散布法を試みた。いずれの方法でもベイト散布後キツネの剖検(小樽)もしくは糞便検査(小清水)において顕著に感染率が減少することが観察され、また、ベイトは成獣よりエキノコックスに感受性の高い幼獣により摂取されやすいことが示唆された。ベイト散布中止後、感染率の上昇が認められたが、この上昇はドイツの結果より緩やかな上昇であった。
  地域住民による実施により、今後のベイト散布法の全道展開に際しての問題点が明確になるものと考えられた。そこで、小清水町と倶知安町のnpo法人の有志にベイト散布法および糞便採取法について1日講習後、地域住民により実施された。今年ベイト散布を開始した倶知安町、以前から継続中の小清水町において行われた糞便採取およびベイト散布効果も含めて学術集会で報告する。
 
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