第10回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

P-3 沖縄・やんばる地域に生息するクマネズミにおけるSalmonellaYersinia の保有状況
 
○奥村 水門1)、中田勝士2)、林谷秀樹1)
1)東京農工大学大学院、2)環境省やんばる野生生物保護センター
 
【目的】
  一般的に、野生げっ歯類は人獣共通感染症原因菌であるSalmonellaYersinia の自然界における重要なレゼルボアであることが知られている。沖縄本島北部のやんばる地域ではクマネズミが広く自然界で野生化して生息している。本地域では、これまで東北地方で患者が多発し、病原性Y.enterocolitica の中で最も病原性の強い血清型O:8 の感染患者が近年確認されたことから、この地域の野生げっ歯類にもO :8 菌が侵入・定着している可能性が考えられる。また、沖縄本島では、東南アジアには広く分布するが、日本本土ではほとんど検出されない血清型S.Weltevreden が人や家畜から高頻度に検出されることが報告されている。本血清型菌は地球温暖化に伴い、東南アジア方面から北上し、侵入してきた可能性が考えられる。そこで本研究では沖縄・やんばる地域で捕獲したクマネズミからSalmonellaYersinia の検出や同定を行ない、この地域への上記病原体の侵淫状況を検討した。
 
【材料と方法】
  供試材料として2008 年9 月から2009 年10 月までの間に、沖縄本島北部のやんばる地域で捕獲されたクマネズミの盲腸便250 検体を用いた。供試材料は定法に従い、Salmonella およびYersinia の分離・同定を行い、分離株については、さらに血清型別や薬剤耐性などを検討した。
 
【結果と考察】
1.   Salmonella は250 検体中11 検体(4.4%)から分離された。分離菌はいずれもS.enterica で、それらの生物群はT群が6 株ならびにV群が4 株であった。また、分離されたT群の血清型はThompson(2 株)、Typhimurium(1 株)、Mbandaka(1 株)、Weltevreden(1 株)、型別不能(2株)であった。また、分離されたTyphimurium は、多剤耐性菌であった。
2.   Yersinia は250 検体中11 検体(4.4%)から分離された。これらのうち、病原性を示す株はY.enterocolitica 1 株のみで血清型はO:3 であった。
3.   以上の結果より、沖縄・やんばる地域において、野生のクマネズミはSalmonella および病原性Yersinia を保菌しており、本地域においてもクマネズミはこれらの人獣共通感染症原因菌のレゼルボアである可能性が示された。
 
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