第8回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次

12 沖縄島北部におけるジャワマングース(Herpestes javanicus) のレプトスピラ(Leptospira spp.)保菌状況
 
○桜井 悠子1)、田中 脩嗣2)、 平良 勝也3)、 石橋 治4)、 小倉 剛2)、増澤 俊幸5)、宇根 有美1)
1)麻布大・獣医・病理学、 2)琉球大・農・亜熱帯動物学、 3)沖縄県衛生環境研究所
4)厚生労働省広島検疫所、 5)千葉科学大・薬・免疫/微生物学
 
  国内では、レプトスピラ症の患者数は近年著しく減少したが、現在でも、全国で散発していて、特に沖縄県では、散発、集団発生が他の地域に比べて多い。そこで、沖縄県におけるレプトスピラの保菌動物を明らかにするために、外来生物法により捕獲されたジャワマングース(以下マングース)を対象として、保菌状況および病理像を検討した。
 
【材料と方法】
  沖縄島北部地域のマングース捕獲事業によって2007年5月〜2008年6月の間に捕獲された109個体の腎臓を対象とした。感染の確認は、捕獲後凍結された材料については、病理学的(ホルマリン固定材料、HE、ワーシン・スターリー(WS)染色とレプトスピラ抗体3種(血清型Hebdomadis、Autumnalis、Javanica抗体)を用いた免疫染色)および分子生物学的(アルコール固定材料、L-flaB-F1とL-flaB-R1プライマーを用いたPCR法)に検索し、新鮮生材料(60個体)については、さらに微生物学的検査(腎からの菌分離、MATを用いた血清型確認)を行った。
 
【結果】
 それぞれの検査法による陽性率は次のとおりで、WS、免疫染色:16.5%(18/109)、PCR法:18.3%(20/109)、菌分離:26.7%(16/60)レプトスピラが検出された。いずれか1つ以上の検査で陽性となったものの割合は25.7%(28/109)であった。菌は皮質尿細管内に限局してコロニーを形成し、分布は様々であった。WS染色で尿細管内に観察された菌体は、全て免疫染色により明瞭に染まった。菌の存在する尿細管には変性および炎症反応はみられず、一部で間質や腎杯部上皮下にリンパ球の集簇巣がみられたが、菌の分布と関連していなかった。分離された菌から推定された血清型はHebdomadisが最も多く、次いでAutumnalis、Javanicaであった。
 
【考察】
  今回の調査で、マングースは比較的高率にレプトスピラを保有していて、さらに、組織学的に菌感染に関連する病変がなかったことから、レプトスピラの健康保菌動物であると考えられた。沖縄県ではマングース以外にクマネズミやリュウキュウイノシシなどの動物もヒトへの感染源として注目されているが、マングースが高率に保有する血清型Hebdomadisが、レプトスピラ症患者の66%から分離されることから、マングースがレプトスピラのレゼルボアとなり、ヒトへの感染に関与している可能性が示唆され、マングースは外来種問題に加えて、公衆衛生上も注意すべき動物と考えられた。
 
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