第5回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


10 サルから分離されたyersinia pseudotuberculosis の病原性状
 
○岩田剛敏 1),宇根有美 2),Alexandre. Tomomitsu Okatani 2),加藤行男 2),中臺 文 1),林谷秀樹 1)
1)東京農工大学共生科学技術研究部動物生命科学部門
2)麻布大学獣医学部獣医学科
 
【目的】
  サル、特にリスザルなどの新世界ザルは、人と動物の共通感染症の原因菌であるYersinia pseudotuberculosis に対して感受性が高く、毎年のように動物園などのサル飼育施設で本菌による感染死亡例が発生しており、サルの飼育管理のみならず公衆衛生の面からも大きな問題となっている。本研究では、我が国のサル飼育施設におけるY. pseudotuberculosis 感染症の実態を把握し、その防除を図るための研究の一環として、サルの感染致死個体から分離された菌について血清型や病原性状などの特徴を整理した。
 
【材料と方法】
  2001年4月〜2005年3月の間に、我が国のサル飼育施設11ヶ所(関東地方3ヶ所、近畿地方1ヶ所、中国地方1ヶ所、四国地方1ヶ所および九州地方5ヶ所)において、延べ15回発生したY. pseudotuberculosis 感染症によるサルの感染致死個体(リスザル12頭、オランウータン1頭、マントヒヒ1頭およびシロガオサキ1頭)から分離された菌株について、血清型別を行なうとともに、保有する病原遺伝子についてPCR法により検索した。
 
【結果と考察】
1.   分離されたY. pseudotuberculosis 15菌株の血清型は、4b型が7株(46.7%)で最も多く、次いで1bが5株(33.3%)、3、6および7型がそれぞれ1株(6.7%)であった。血清型7型については、これまで非病原性の血清型とされていたが、本調査により7型による動物の感染致死事例が初めて確認された。
2.   分離された15菌株について、PCR法により病原遺伝子の保有状況を調べた結果、15株いずれもがY. pseudotuberculosis の侵襲性に関与する病原遺伝子であるinvvirFを、また、13株(86.7%)がY. pseudotuberculosis の産生するス−パ−抗原であるYersinia pseudotuberculosis-Derived Mitogen(YPM)をコードするypmA遺伝子を保有していた。一方、High-Pathogenicity island(HPI)の中に存在し、鉄規定タンパクをコードしているirp2は検出されなかった。
3.   YPMは日本を含むアジア極東地域で分離されるY. pseudotuberculosis に限局して分布することが知られているが、我が国において南米やアフリカを原産とするサルがY. pseudotuberculosis に感染した場合、極めて重篤な症状を示すことが多い理由として、Y. pseudotuberculosis の産生するYPMが関与している可能性が示唆された。
 
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