第5回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


5 輸入愛玩鳥におけるクラミジア保有状況
 
○米川和宏 1),大野貴文 1),衛藤真理子 1),須永 裕 1),福士秀人 2)
1)動物検疫所
2)岐阜大学応用生物科学部
 
【目的】
  オーム病は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律により、4類感染症に指定されている。原因は鳥類が保有するChlamydphila psittaci (以下、C. psittaci )である。近年のペットブームにより、ヒトが愛玩鳥の保有するC. psittaci に暴露されるリスクが高まっていると考えられる。そこで、輸入愛玩鳥類について実施している病原体保有状況調査の一環として、クラミジア科の保有状況について調査を行った。
 
【材料と方法】
  平成14年10月から平成17年5月に、主に成田空港と関西空港で輸入された愛玩鳥のうち、134群を調査した。これらは、台湾、オランダ、南アフリカ等23カ国から輸入されたもので、到着時死亡鳥(1〜7羽/群)を採取した。脾臓、呼吸器及び肝臓、消化管材料の3種類のプール材料について、Sepagene(三光純薬)により抽出したDNAを用い、クラミジア科検出PCRを実施した。また、当該PCR陽性検体について、C. psittaci 特異的プライマーを用いたPCRを実施するとともに、呼吸器・肝臓及び消化管材料に抗生剤添加リン酸緩衝液を加えて20%乳剤を作成し、7〜10日齢の発育鶏卵の卵黄嚢内に接種して9〜12日間培養で分離試験を実施した。開卵時に卵黄膜を回収してスタンプ標本を作製し、クラミジアFA試薬「生研」(デンカ生研)を用いた蛍光抗体法(FA)による基本小体と封入体の観察及びPCRによるクラミジアの同定を行った。
 
【結果】
  クラミジア科検出PCRの結果、134群中24群が陽性(17.9%)であった。種類別では、インコ類を含む群では55群中11群(20.0%)、スズメ類を含む群では67群中8群(11.9%)、ダチョウを含む群では7群中2群(28.6%)が陽性であった。国別では、南アフリカが11群中4群(36.4%)と高率で、オランダは15群中5群(33.3%)、台湾は47群中3群(6.4%)が陽性であった。クラミジア科検出PCR陽性の24群中20群でC. psittaci 検出PCR陽性(83.3%)であった。クラミジア科検出PCR陽性の24群の分離試験では、1群の呼吸器・肝臓及び消化管材料を接種した卵黄膜でFA及びPCR陽性となりクラミジア科と同定した。
 
【考察】
  今回のサーベイランスにおいて、斃死輸入愛玩鳥類におけるクラミジア科の保有率は約18%であることが明らかとなった。PCR陽性事例はインコ類を含む群に多く見られ、国内サーベイランス結果(インコ類の約15%)と同様の傾向がみられた。また、陽性率の輸入時期による季節的変動は認められなかったが、同一時期に輸入された群で陽性率が高い傾向が認められた。クラミジア科検出PCRで陽性であるが、C. psittaci 検出PCRで陰性のものについては、C. psittaci 以外のクラミジア科の感染によるものと考える。クラミジア科の診断法はPCRが最も検出感度が高く、細胞培養法、発育鶏卵接種法の順であり、本調査での分離率が低かった要因として、死後長時間を経た材料では分離が困難となることが示唆された。
 
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