第4回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


[教育講演] 動物由来感染症対策強化の概要
 
  滝本浩司
厚生労働省健康局結核感染症課感染症情報管理室長
 
はじめに
  我が国における動物由来感染症対策は、長らく狂犬病予防法に基づく犬の対策がその主体となっていたが、1970年代以降、新しい感染症が次々と出現する中、それらの多くが動物由来感染症であったことから、平成11年に施行された感染症法において、狂犬病以外の動物由来感染症についても、法に基づく対策がとられるようになった。
  すなわち、それまでの伝染病予防法には明示のなかったエボラ出血熱やマールブルグ病など新たな動物由来感染症が感染症法に規定され、これらの感染症については医師による患者発生届出のみならず、獣医師に対しても感染動物の発生届出が義務づけられるとともに、これら感染力や致死率の極めて高い感染症の国内侵入を阻止するため、感染源となる動物(サル)について輸入禁止措置や検疫措置を講ずることとされた。
  このように平成11年の感染症法の施行により、ようやくその芽が出だした動物由来感染症対策が、平成15年10月の感染症法の改正により、さらに大きな木になるべく充実強化されることとなった。以下、感染症法の改正により強化されることとなった対策の概要について述べる。
 
輸入動物届出制度の創設
  これまで、海外から輸入される動物に対する安全性上の規制については、1) 輸入そのものを禁止するもの(アフリカのサル、プレーリードッグ、コウモリ等(感染症法))2) 一定の検疫を行った上で輸入を認めるもの(犬、猫等(狂犬病予防法)、一定地域のサル(感染症法))のみで、これら以外の動物については何らチェックが行われないばかりか、問題が発生した際に迅速に追跡調査することも不可能であった。実際、野兎病やサル痘などに感染した疑いのある野生げっ歯類が我が国に輸入されていたという事件も続発した。このようなことも踏まえ、人に感染症を感染させるおそれのある動物について、輸入時に届出を求める制度が創設された。なお、この制度は単に届出をすればいいというものではなく、輸出国で衛生管理を行い、感染症にかかっていないことを輸出国の政府機関が証明した衛生証明書を添付して届出しなければ輸入できない仕組みとなっている。これによって、事実上、感染症を持ち込む可能性のある動物は、全て規制の対象となった。
 この輸入動物届出制度は、平成17年9月から施行されることとなっており、対象となる動物等については、平成16年9月15日の厚生労働省令により、「哺乳類(げっ歯目、うさぎ目、その他の哺乳類)、鳥類、げっ歯目等の死体」と定められた。
 
獣医師の届出対象疾患の拡充
  政令指定されている感染症に罹患している動物を診断した獣医師は、直ちに必要な事項を最寄りの保健所長を通じて都道府県知事に届けなければならない制度であるが、今回の改正により、従前の1類から3類に加え、4類の感染症についても、対象となる感染症を指定することが可能となった。この法改正に基づき、本年6月の感染症分科会の提言を踏まえ、新たに、「サルの赤痢」、「鳥のウエストナイル熱」及び「犬のエキノコックス症」が政令指定され、10月1日より施行されている。これまでは、サルのエボラ出血熱など我が国に存在していない疾病のみが対象であったが、今回の改正により、診断する機会のある疾病も対象となっており、全ての獣医師に周知されることが重要である。
 
獣医師等の責務規定の創設
  今回の法改正においては、動物由来感染症対策の重要性に鑑み、獣医師等も感染症の予防に関する施策に協力すべき旨の責務規定が明記されるとともに、動物等取扱者については、感染症の予防に関する知識・技術の習得、動物の適切な管理等の措置を講ずべき旨の責務規定が課せられた。
 
動物の調査規定の明示及び対物措置の拡充
  感染症の発生を予防するために、感染症を媒介するおそれがある動物等について、必要な調査をすることが明文化されるとともに、感染症の発生時に消毒等の対物措置を行える対象疾患の範囲が、これまでの1類から3類までに加え、4類感染症にまで拡大された。
 
おわりに
今回の法改正やそれに基づく政省令の改正により、動物由来感染症対策強化のための法的な枠組みができた。今後、輸入動物届出窓口を設置するなど円滑な制度導入に努めるほか、サーベランス体制の充実や検査体制の強化などについても検討したいと考えており、各方面のご理解ご協力を仰ぎたい。
 
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