第4回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


5 メコンデルタ水系からのサルモネラ分離と分離菌の性状解析
 
  ○秋庭正人 1),Tran Thi Phan 2),Ly Thi Lien Khai 2),林谷秀樹 3),鮫島俊哉 4),伊藤博哉 5),吉井紀代 1),中澤宗生 1)
1)動物衛生研究所安全性研究部
2)カントー大学獣医学部
3)東京農工大学農学部
4)動物衛生研究所生物学的製剤センター
5)同九州支所
 
【目的】
  メコンデルタはインドシナ半島の南部に位置し、メコン川によって上流から運ばれた肥沃な土壌からなる扇状地である。この地域における主要作物は湿潤な土壌に適応した稲であるが、多くの農家がファーミングシステムと呼ばれる資源再利用型の稲作・畜・水産複合経営を行っている。本研究ではファーミングシステム水系におけるサルモネラ汚染状況を明らかにすると共に、分離菌の性状を解析した。また水系と家畜の間でサルモネラが循環している可能性を検証した。
 
【方法】
  2001年2〜3月にベトナム・メコンデルタに位置するタンプータン村の農家において井戸、家畜飲用水、池、水路、及び農家に隣接する河川から水検体を集め、サルモネラの分離を試みた。常法に従ってサルモネラと同定された菌株については血清型別を行った。また寒天平板拡散法による薬剤感受性試験を実施した。さらに2000年にタンプータン村の豚から分離されたサルモネラと水由来サルモネラをパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)で比較した。
 
【結果】
  タンプータン村の40農家から集めた142検体のうち、30検体(21.1%)からサルモネラが分離された。40農家中、19農家(47.5%)で分離陽性であった。30の陽性検体のうち6検体からは2種類の血清型が分離された。分離菌36株の中に19の異なる血清型を認めた。血清型Derby(n=6)、O3,10: r: -(n=4)、Anatum(n=3)、Bardo(n=3)、Javiana(n=3)、London(n=2)、Bovismorbificans(n=2)、Dessau(n=2)が2検体以上から分離された。分離菌36株中、ストレプトマイシン(SM)耐性は21株に、テトラサイクリン(TC)耐性は7株に、アンピシリン(ABPC)耐性は6株に、クロラムフェニコール(CP)耐性は4株に、ST合剤(SXT)耐性は4株に、ナリジクス酸耐性は2株に、それぞれ認められた。Derby6株中4株はABPC、SM、CP、TC、SXTの5剤に耐性を示した。血清型DerbyとJavianaについて水由来株と豚由来株をPFGEで比較したところ、一部のDerbyとJavianaについては異なるバンドの数が3本以下であった。このうちDerbyについては水由来株と豚由来株の薬剤耐性型が一致した。
 
【考察】
  本研究からタンプータン村の水系は様々な血清型のサルモネラに汚染されていること、そして半数以上の分離菌が何らかの薬剤に耐性を示すことが明らかとなった。またこの地域の水と豚から類似度の高いDerbyとJavianaが分離されることから、サルモネラがこの地域の家畜と水系の間で循環している可能性が示唆された。
 
【結論】
  家畜飲用水49検体中3検体(6.1%)から血清型Javianaを含むサルモネラが分離されていることからも、この地域における家畜のサルモネラ感染を防ぐためには、少なくとも家畜飲用水の消毒が必要である。加えて農家に対しては適切な環境衛生知識の普及をはかる必要がある。
 
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