第4回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


4 野生ならびに輸入爬虫類におけるSalmonella の保有状況
 
  ○中臺 文 1),黒木俊郎 2),森 哲 3),Tran t. Phan 4),Ly T. L. Khai 4),
石橋 徹 5),宇根有美 6),加藤行男 6),堀坂知子 1),岩田剛敏 1),林谷秀樹 1)
1)東京農工大学大学院共生科学技術研究部
2)神奈川県衛生研究所
3)京都大学大学院理学研究科
4)Cantho大学
5)いのかしら公園動物病院
6)麻布大学獣医学部
 
【目的】
  欧米諸国では、多くの種類の爬虫類がペットとして飼育されているが、これらの爬虫類は高率にSalmonella を保有し、人への感染源となっていることが報告されている。近年、我が国でも爬虫類のペットとしての人気が高まっており、さまざまな種類の爬虫類が飼育されるようになってきている。我々は国内のペットショップで販売されている爬虫類のSalmonella 保有状況を調査した結果、これらの爬虫類は非常に高率にサルモネラを保菌していることを明らかにした。今回、爬虫類がSalmonella を保有するメカニズムを解明し、人への感染予防対策を確立するための研究の一環として、日本およびベトナムの野生の爬虫類ならびに日本にペットとして輸入された直後の爬虫類におけるSalmonella 保有状況について調査した。
 
【材料と方法】
  2000〜2003年に日本(9都府県)ならびにベトナム・メコンデルタで捕獲した野生爬虫類、それぞれ9種354検体ならびに8種287検体、および2001年ならびに2004年に動物輸入業者から入手した日本に輸入した直後の爬虫類28種91検体、計732検体の糞便または腸管内容物を供試材料とした。Salmonella の分離、同定は定法に従った。また、Salmonella と同定された株については、生物群および血清型まで型別した。
 
【結論と考察】
1. 日本およびベトナムの野生爬虫類におけるSalmonella 保菌率は、それぞれ36.4%(129/354)および48.4%(139/287)であった。
2. 動物種別にSalmonella の保有状況をみると、日本ではヘビ類の71.1%(108/152)、カメ類の16.1%(15/93)およびトカゲ類の5.5%(6/109)から、ベトナムではヘビ類の61.8%(63/102)、カメ類の60.5%(26/43)およびトカゲ類の35.2%(50/142)から本菌が分離され、両国ともヘビ類の保菌率が高かった。
3. 分離株の生物群の分布をみると、日本由来株ではIIIb群が57.4%で最も多く、次いでI、IV群が14.2%であった。一方ベトナム由来株では I 群が75.0%を占め、ついでIV群が10.5%、IIIb群が8.1%であり、その分布の姿は日本と大きく異なっていた。
4. ベトナム由来の生物群 I 群のSalmonella は13血清型に型別され、メコンデルタ地域で家畜や環境から分離が報告されている血清型と類似していた。このことから、野生爬虫類のSalmonella 保菌は環境からの影響を受けている可能性が示唆された。
5. 日本へ輸入された直後の爬虫類におけるSalmonella 保菌率は、56.0%(51/91)であり、ペットとして輸入される爬虫類は、すでに輸入された時点で高率に本菌を保有していることが明らかとなった。動物種別の保菌率は、トカゲ類で60.6%(43/71)、カメ類で40.0%(8/20)であった。
6. 輸入爬虫類から分離されたSalmonella は、59.1%が生物群 I 群に、16.7%が II 群に、12.1%が IIIb群に型別された。また、I 群のSalmonella は18血清型に型別され、人の胃腸炎患者から分離される血清型も含まれていた。
7. 以上のことから、爬虫類はもともと野生の状態でもSalmonella を比較的高率に保菌しており、その保菌は環境からの影響を受けている可能性が高いものと思われた。今後、これら爬虫類におけるSalmonellaの生態や疫学をよく理解した上で、本菌の爬虫類から人への感染予防対策を図っていく必要がある。
  なお、本研究は、岐阜大学COE「野生動物の生態と病態からみた環境評価」の研究の一環として実施されたものである。
  
共同研究者:中込とよ子(秋田大医),中込 治(長崎大医)
 
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