第4回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


2 東アジアの人とげっ歯類のおけるハンタウイルス感染の疫学的研究
 
  吉松組子 1),Sanit Kumperasart 2),Truong Thua Thang 3),荒木幸一 1),Byoung-Hee Lee 1),
奥村 恵 1),中村一郎 1),Detlev H. Kruger 4),苅和宏明 5),高島郁夫 5),○有川二郎 1)
1)北海道大学医学研究科附属動物実験施設
2)National Institute of Health, Department of Medical Sciences, Thailand
3)National Institute of Hygiene and Epidemiology, Hanoi, Vietnam
4)Institute of Virology, Charite Medical School, Campus Mitte, Germany
5)北海道大学獣医学研究科公衆衛生学教室
 
【目的】
  ハンタウイルスはげっ歯類を自然宿主とし、人に腎症候性出血熱(HFRS)やハンタウイルス肺症候群(HPS)を引き起こす。HFRSはユーラシア大陸全域で発生しているが、中国および極東ロシア地域で最も多くの患者が報告されている。しかし、その他の東アジア地域におけるハンタウイルス流行状況には不明な点が多い。本研究では、東アジアにおけるハンタウイルス流行の疫学的状況を明らかにすることを目的として、ベトナムとタイの人とげっ歯類を対象にハンタウイルス感染の疫学的解析を行った。
 
【材料と方法】
  血清検体:ベトナム北部の6省で健常人もしくは不明熱患者(デング熱ウイルス陰性)2,500名よりまた3省より255例のげっ歯類より血清検体を得た(2003年)。タイ北部Surin省で2002-2003年に得られたレプトスピラ様患者(抗体陰性)519例と19省より得られたげっ歯類血清(402例、1995-1998年)を用いた。抗体検査:ELISA、IFAおよびWB法による結果を総合して確定診断した。
 
【結論と考察】
  ベトナム人血清2,500例中、ELISAでの一次スクリーニングで擬陽性以上を示した838例のうち北部3省(Haiphong港、Thanh Hoa省、Ha nam省)の13例が血清学的にハンタウイルス抗体陽性と判定された。多くがSeoul型感染と考えられたがHantaan型に高値を示すものや血清型鑑別が出来ないものもあり多様な株の存在が示唆された。Thanh Hoa省とHa Nam省で捕獲されたげっ歯類(ドブネズミと考えられる)に抗体陽性例が認められた。今回、Haiphong港のげっ歯類は含まれていないが現在調査を継続中である。タイの2症例から得られた3血清が抗体陽性であった。また、げっ歯類血清では3地区で得られたBandicota indica (5/104)とそれぞれ1地区で得られたB. savilei とRattus rattus に陽性が認められた。これら人とBandicota 陽性血清の交差中和試験の結果、Thiland型ハンタウイルス感染と考えられた。特に、1症例は臨床症状がHFRSと類似し、抗ハンタウイルスIgM抗体も確認されたことから、これまで人への病原性が不明であったThiland型ウイルスがHFRSの原因ウイルスである可能性が示唆された。また、Thiland型ウイルスの標準株である749株のSセグメント遺伝子の塩基配列を決定した結果、カンボジアのRattus rattus から得られたハンタウイルスと最も類似しており、タイやベトナム等のインドシナ半島諸国にThiland型もしくは類似したハンタウイルスが存在していると考えられた。
 
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