9 1992〜2001の10年間の本邦における Pasteurella spp. の分離状況 |
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荒島康友、池田忠生、加藤公敏、熊坂一成
日本大学医学部臨床検査医学教室、同生物学教室、同第3内科学教室 |
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【目的】 |
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我々は「本邦における Pasteurella multocida の分離状況」を 1992年度本学会総会、および 1993年感染症誌(67:791-794、1993)に発表した。今回は、1. 感染症法で Zoonosis が大きな柱の1つとなったこと、2. 前回の調査結果より、糖尿病、慢性呼吸器疾患、高齢者に本菌の分離された患者が多かったこと、3. ペット・ブームが継続していること、等から、本菌による感染症の把握を再度行い、治療、予防に役立てる目的で、 '92 〜 '01 の 10年間の本菌の分離状況について調査を行ったので、その結果を報告する。 |
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【対象】 |
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臨床研修指定病院 478病院を対象とした。 |
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【方法】 |
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郵送にて、Pasteurella spp. 分離状況のアンケート用紙を2度に分けて送付し、回答の回収を行った。 |
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【結果】 |
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291病院( 60.9%)から回答があり、そのうち 206病院(7 0.8%)に本菌分離経験が認められた。分離数は 1,181株であり、1997年以降の4年間の前年度比平均増加率は約 40%であった。 |
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【考察】 |
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回答病院のうち本菌を分離したのは、10年前が 44.6%、今回が 70.8%と顕著な増加が認められた。また、本菌分離の前年度比平均増加率は、前回 '89〜 '91が約25%、今回 '97〜 '01が約 40%とこれも著しい増加傾向を示していた。
今回の Pasteurella spp. 分離率の著増の原因として、1. 本邦のペット・ブームの拡大。2. 高齢社会の存在および拡大。(感受性者の増加)3. 住環境の変化、等の複合要因が考えられた。
現在、感染症にかかわる諸要因が拡大傾向にあること、さらに、感染源のイヌ、ネコが身近な存在となってきていること、繰り返し感染例、死亡例の存在、等からも、従来以上に今後も Pasteurella spp. の動向に厳重なる監視と注意が重要であると思われた。 |
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【謝辞】 |
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本研究に参加頂いた多数の施設に心より深謝致します。また、本研究の一部は、平成12年度文科省・学術振興会基盤研究(B)(No.12470531)、平成 12年度日本大学学術助成金一般研究(共同)(No.共00-017)によった。 |
表 研修指定病院における Pasteurella spp.の分離状況
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調査期間 調査病院数 回答病院数(%) Pasteurella spp. 分離病院数 |
〜 '91 380 258 (67.8) 115 (44.6) |
92〜 '01 478 291 (60.9) 206 (70.8) . |
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