W 第6回学術集会講演要旨 新潟県内のイヌおよびネコにおける人と動物の共通感染症疫学調査
第6回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


8 新潟県内のイヌおよびネコにおける人と動物の共通感染症疫学調査
 
川島 剛 1),熊倉政樹 1),山岸浩之 1),渡辺 満 1),齋藤純子 2),小宮智義 2),池田忠生 3),荒島康友 3),○松谷正巳 1)
1)新潟小動物臨床研究会
2)北里研究所生物製剤研究所
3)日本大学医学部
 
【目的】
  現代社会においてイヌ、ネコ等の伴侶動物は家族の一員として受け入れられ、人と接触する機会が増えてきており、その中で人と動物の共通感染症が注目されてきている。今回我々はイヌのQ熱およびレプトスピラ症、ネコのQ熱、猫ひっかき病(以下CSD)およびトキソプラズマ症の病原体の新潟県における侵淫状況を明らかにし、飼い主に対する適切な飼育管理指導の一助とするため、これら病原体に対する抗体保有状況等の調査を実施し疫学的な検討を行った。
 
【材料と方法】
  2003年5月から12月の期間、佐渡を除く新潟県内の動物病院に来院したイヌ101頭、ネコ100頭を対象とし、採血後血清を分離し凍結保存したものを検査に供した。検査はQ熱、CSDおよびトキソプラズマ症は(社)北里研究所に、レプトスピラ症は(株)微生物科学研究所に依頼した。検査方法はQ熱病原体の抗体価はIFA法、抗原保有状況はPCR法による遺伝子検出により、CSD抗体価はifa法により、抗トキソプラズマ抗体価はラテックス凝集法により、レプトスピラ抗体価は顕微鏡的凝集試験(MAT)により、Leptospira icterohaemorrhagiaeL. canicolaL. hebdomadisL. autumnalisL. australisの5血清型についてそれぞれ測定した。Q熱およびCSDは抗体価64倍以上を、トキソプラズマは32倍以上を、レプトスピラは40倍以上を陽性と判定した。併せて飼い主に飼育状況等の調査を行い疫学的な検討を行った。さらに飼い主に対し、人と飼育動物がどのようにかかわっているかを調べるためアンケート調査を実施した。また、Q熱の抗体が陽性と判定されたネコとその飼い主については、希望によりQ熱の再検査を実施した。
 
【結果と考察】
  抗体保有状況は、イヌ101頭中Q熱1頭、レプトスピラ14頭が抗体陽性であった。レプトスピラ血清型別ではL. icterohaemorrhagiaeが12頭で最も多く、次いでL. autumnalisL. canicolaの順で陽性率が高かった。ネコでは100頭中Q熱11頭、トキソプラズマ18頭が抗体陽性であった。CSDは抗体陽性のものは認められなかった。また、イヌ、ネコともにQ熱病原体の抗原は検出されなかった。Q熱抗体が陽性と判定されたネコ2頭について約7ヶ月後に再検査を行ったところ抗体は陰転し、抗原も検出されなかった。Q熱抗体が陽性と判定されたネコの飼い主1名について検査を行ったところQ熱抗体、抗原ともに陰性であった。疫学的検討では、ネコのQ熱はFIV抗体陰性ネコで34頭中1頭陽性(2.9%)、FIV抗体陽性ネコで12頭中3頭陽性(25.0%)でFIV抗体陽性ネコで抗体陽性率が有意に高かった(P<0.05)こと、また、FIV感染の主な要因が外出等によるFIV感染ネコとの接触と言われていることから、このことを防ぐことがネコのQ熱の感染を防止する一つの方策として重要ではないかと考えられた。アンケート調査はイヌ、ネコの飼い主それぞれ101名、98名計199名から回答を得た。その結果、90.5%の飼い主で動物を家族の一員として飼育し、特にネコでは飼い主の65.3%が寝床で一緒に寝ると回答しており、人と動物がメンタルおよびフィジカルの両面で深いかかわり合いを持っていると思われた。このことから飼育動物と飼い主の間に動物から人と動物の共通感染症の感染する機会が高い環境があると思われた。以上の点から、飼い主に対し人と動物の共通感染症の正しい知識の普及と、動物との適切な接し方を指導していくことが重要であると考えられた。
  
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