第5回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次


1 我が国の飼育犬に狂犬病が侵入した場合の伝播と流行拡大の数理モデルによる解析
 
○大日康史 1),井上 智 2)
1)国立感染症研究所感染症情報センター
2)国立感染症研究所獣医科学部
 
【目的】
  我が国に狂犬病のイヌが侵入した場合の飼育犬における狂犬病の伝播と流行の拡大について現行の狂犬病対策を反映させた数理モデルによる解析を行なった。
 
【方法】
  数理モデルは、狂犬病の発生が報告された時点では野犬は存在してないものとして1辺10kmからなる100平方kmの地域に100m間隔で飼育犬が一様に分布していると仮定して行なった。狂犬病に感染したイヌの臨床経過、病態、疫学的情報は論文等を引用し、国内の飼育犬の数や分布等の疫学情報は自治体および国の統計資料等を利用して推計した。数理モデルでは狂犬病発生前後に行なわれる予防および対応策として「飼育犬の狂犬病ワクチン接種率」、「狂犬病の発生が確認される時期」、「飼育犬の係留率」、「野犬の捕獲率」をモデルに反映させて、狂犬病を発症したイヌの
(1)累積罹患頭数、
(2)最初に狂犬病のイヌが発見された地点からの流行拡散距離、
(3)発生した狂犬病を制圧するまでの日数についてシミュレーションを行なった。
  計算は、最初に侵入する狂犬病に感染したイヌが発症してからの150日間について100回の繰り返しを行ない中央値、95%信頼区間を求めた。なお、本モデルでは狂犬病の発生から終息までの経過解析を行なうために発生時に行なわれる限局的なイヌの集団予防接種を反映していない。
 
【結果と考察】
  現行の狂犬病の国内対策を反映させた今回のモデル解析では、
(1)発症犬が早期に発見できれば狂犬病に罹患するイヌの頭数が有意に減少すること、また、
(2)ワクチン接種率の低下は発生時のイヌの狂犬病罹患頭数を有意に増加させ、
(3)狂犬病が発生した時点での飼育犬のワクチン接種率が70%以上の場合に制圧までの日数(下限)が短くなる傾向が示された。
  本研究により、国内の飼育犬で発生した狂犬病の伝播と流行拡大を効果的に阻止して発生時の被害を最少とするためには、狂犬病を発症したイヌの早期発見を可能とするサーベイランス・システムの必要性と重要性が明らかになった。
 
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