第3回 人と動物の共通感染症研究会学術集会 研究会目次
(05/09/13 一部訂正しましたが発表内容に変更はありません。)


5 Coxiella burnetii によって起こる卵、鶏、ヒトへの感染実態
 
 喬 瑩 1、巽 典之 1、温 慶華 1、高畠 有紀 1、山元 一休 1、山口 和男 2 、(ほか1名は依頼により削除しました)
(1 人獣共通感染予防医学研究所、 2 金沢大学学際科学実験センター、遺伝子研究施設)
 
【発表要旨】
  人獣共通感染症の一つであるQ熱は、非常に多彩な慢性疾患と関連していることが分かってきている。我々は、日本人が卵を生で食する習慣があることから、経口感染源の一つとして生卵に注目し、PCR、sequence、経口感染法などの方法で調べた結果、以下の結論が得られた。
1.  市販卵のコクシエラ菌汚染が進んでいる。
2.   マウスに陽性卵の一部を経口投与したところ、マウスがQ熱に感染した。
  従って、卵の中のコクシエラ菌は生存しており、感染力がある。
3.   鶏もヒトも感染有無の判断は菌のそのものに対する検査で判断すべきで、抗体価と菌の感染の相関性は必ずしも高くはない。
 
【実験材料】
  市販生卵 700個、鶏 1,067羽の血漿、ヒト 74人の血漿
 
【方法】
  Nested PCR法、 Real Time(RT) PCR法、塩基配列決定法、IFA, SCIDマウスの経口感染法
 
【結果】
  生卵黄一部をDNA抽出し、コクシエラ菌 com 1 gene検出プライマーのOMP1とOMP4でRT-PCRにかけて1回目の増幅を行い、さらにプライマーのOMP3とOMP4でNested PCRにかけた。その産物を電気泳動像で確認したところ、陽性率は約 12.8%であった。それらの陽性バンドを電気泳動ゲルから切り出し精製し 59検体のsequenceの決定を行ったところ、すべてコクシエラ菌 Nine Milecom 1 geneの一部と一致した。そのうち12検体のsequenceに関してはmutationが認められた。
  コクシエラ菌の生存を調べるため、陽性と判断した卵の残りの一部を遠心濃縮し、SCIDマウスに経口投与しながら、P3室内で飼育した。経時的に採血し、同じく実験した結果、経口投与を開始した2週目から血液中にコクシエラ菌の遺伝子を検出し、sequenceも同定し 菌の感染が確認できた。
  鶏の感染実態を調査する為、産卵鶏 1,067羽の血漿を遠心処理し、上清部のIFAを測り、沈殿部をDNA抽出し、Nested PCR法で増幅を行い、電気泳動で陽性バンドの検出よりコクシエラ菌の com 1 geneで菌の存在を確認した。感染率は約7%であった。IFAが 8倍、16倍、32倍、64倍、128倍で行い、感染鶏と抗体価の相関性を見るため PCRとIFAで相関性を調べた。相関性はあまりないことが分かった。ヒトも同様な結果であった。
 
【考察】
  生卵 700個の内訳は、400個が東京都、300個が富山県内で購入したものである。PCRにかける前処理を工夫し、Real Time PCR法とNested PCR法を組み合わせることにより検出率をアップさせた。今後、感染鶏と未感染鶏それぞれから生れた卵の追跡調査と組織学的研究を行いたいと考えている。
 
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